季節の行事について

有る程の芋投げ入れよ鍋の中 今や伝説となったラジオドラマ「芋煮会」を聴いて以来、芋煮なるものにいつかは参加したいものだと、この季節が巡ってくる度に考える。東北に知り合いが居ないこともないのだけれど、しかし実際にはなかなか行く機会がない。 里…

ドルチェについて

毎年5月31日が近づくとタバコの害を主張する報道が増え、煙の味が些か苦くなる。タバコの場合は被害をはっきりと定量化できるから攻撃しやすいのだろうが、しかしそもそも誰にも一分の迷惑もかけずに生きていくことなどできるのであろうか。他人様の寿命を一…

庶民の食卓について

ヴェネツィア共和国時代、国家的な正餐は年に五回あったそうである。これらは順に、○4月25日:守護聖人聖マルコの祭日○キリスト昇天祭[移動祝祭日]:999年にドージェ、ピエトロ・オルセオロII世がアドリア海を平定するためにヴェネツィアを出航したのを記念…

貴顕の食卓について

エリオ・ゾルズィという人によると、かつてヴェネツィアーニは一般的に一日二回の食事を取っていたそうである。十一時から正午の間に取る軽食、おおむね一皿のみで済ますmerenda、そしてミネストラと二、三皿の料理からなっていて、午後五時、これをora dogal…

肉料理について

古いヴェネツィア料理について調べていればもちろんヴェネツィア語の文章に行き当たるわけで、昨年買ってきてもらったヴェネツィア語辞典は本当に重宝している。紙の辞書というのはときに思いがけない言葉との出会いをもたらすもので、先日は調べ物の最中に…

魚料理について

18世紀、共和国が滅び行く頃にもヴェネツィアには多くの漁師がいた。マランゴーニという人のリポートによると、1784年には、「聖アンドレアのスクオーラ[組合]は、i venditori di pesce, i vallesani e i batellieriを含めて3390人を擁していた」という。…

カルロ•ゴルドーニについて

カルロ・ゴルドーニ(1707-1793)はヴェネツィア生まれの著名な喜劇作家。モデナ出身の医師であった父ジュリオと母マルゲリータ・サヴィオーニ(サルヴィオーニ)の間に生まれ、本人は中産階級ということになるのだが、父の往診につきあって様々な社会階層の人…

料理学校について

先日、近くにある農協の直売所で野菜を物色していたときのこと、エンダイブという見慣れない野菜が目に留まる。ポップには「炒め物にするかそのままサラダに」と書いてあったが、これがどういうわけか気になって仕方がない。何に使うかも決まらないままにと…

パーネについて

イタリア人の主食はパンである。パスタではない。 日本語の語彙でいうパスタ、つまりスパゲッティやらペンネやらは概ねプリーモで出されるものである。イタリア料理のコースは基本的に、 ○antipastoアンティパスト(前菜)+aperitivoアペリティーヴォ(食前…

黄金の果実について

バッカラ関連レシピの翻訳が済んだのはいいが、出来上がった後に数えたところその数は重複分も含めて26に上った。この重複分というのは例の「バッカラ・マンテカート」で、これは基本中の基本料理なのでどの本にも載っているものなのだが、どれを見比べても細…

過ぎ去った春について

季節はとうに夏であるが、ここのところしばしばSpaghetti Primaveraを作っていた。プリマヴェーラというのはイタリア語で「春」という意味である。これはヴェネツィア料理でないどころか、そもそもイタリアではなく北米で作られたレシピなのだそうだが、ヴェ…

口の開け方について

未だに慣れないのだが、そういえばパソコンが常時ネットにつながっているのだったと気付いてrisi e bisi e fragoleを画像検索してみたところ、単にイチゴが上に乗っかっているだけで特にどうということはなかった。イタリアの名誉のために一応ことわって置く…

トリコローレについて

気がついたら帰国から三週間ほど経過していた。一年ぶりの車の運転、街での歩き方(ヴェネツィアは右側通行が基本だが、関西はどうやら左側通行のようだ)、異常に柔らかいパンなど、最初はあれこれ戸惑ったが、仕事が無いこと以外はもう何もかも元通りで、…

街の原点について

気がついたら帰国まで二週間を切っていた。帰国直後に最後の一仕事があり、その準備に掛かりきりでいたためにあまり考えずにいたのだが、概ね出来上がってきたところで余裕ができるとあらためて帰国後のことを考えてしまう。 帰国と共に私の研究生活が終わる…

肉と魚について

気をつけるようにとは言われながらも、寝起きするパラッツォを一歩外に出ればそこはリアルト橋なわけで、カルネヴァーレの期間中も結局はちょくちょく街中を見て回っていた。夏場のレデントーレ前後の喧噪と比べてみるとどうも人が少ないような気がしたので…

サン・マルコ聖堂について

ヴェネツィアーニは総じて地味で、イタリア南部の人たちと比べると人見知りも強く、とにかく控え目で始末屋、というのがこれまでのイメージであった。パラッツォ・ドゥカーレへ入ったときもその印象は変わることがなく、この自制心こそがヴェネツィア共和国の…

聖マルコについて

すでにプレイベントも始まっており、パスティッチェリアにはfrittelleフリッテッレやgalaniガラーニなど、この時期ならではのお菓子が並んでいる。街はまた混雑し始め、休暇していた店の多くもぽつぽつ営業を始めるようになった。この1月30日からヴェネツィ…

香気と冷気について

新鮮なハーブが手に入ったのでハーブティーを手作りしてみました。今回はtimoタイム、salviaセージ、rosmarinoローズマリーのブレンドで、これらのerbe aromatiche(ハーブ)はもちろんリアルト市場で買ったものです。お湯を注いだ瞬間からお部屋がステキな…

アックァ・アルタについて

年末年始は特別なこともなく、ただ仕事をしながら過ごしていた。大晦日にサン・マルコ広場のカウントダウンに出かけようかと考えたこともあったが、ナターレの頃に少し体調を崩していたこともあり、大事を取ったのである。カウントダウンのイベントはこの先ま…

ナターレについて

イタリア語ではクリスマスのことをNataleという。この日の挨拶はメリー・クリスマスではなく、Buon Natale!というのであるが、街には英語のクリスマスソングも流れているし、店頭に英語でMerry Xmasと書いてあるところも多いので特にこだわりはないらしい。い…

ムラーノ島での暴走について

暴走というのは際限がないから暴走というので、例のヴェネツィア料理の食事会でアペリティーヴォを出すためのフルートグラスはvetro di Murano、いわゆるヴェネツィアングラスのものを用意した。そのためにムラーノ島まで行ってきたのだが、これもまた一仕事…

リアルト市場での暴走について

市場で事件があったとかいう話ではないので勘違いしないで戴きたい。暴走したのは私である。 縁あってこちらで知り合いとなった日本人の先生方には普段からいろいろとお世話になっており、また、イベントがあると一緒になって繰り出したりするということにつ…

文化人について

家主からコンサートに招待された。イタリアといえばオペラで、ヴェネツィアといえばフェニーチェ劇場であり、そこにはそこで行く予定もあるのだけれど、今回はそうかしこまったものではない。招待された場所はそのフェニーチェのすぐ傍にあるAteneo Venetoで…

衝突のない文化について

とある日の帰り道、いつものように家の傍のRiva del Vinへ出たところで、カナル・グランデの対岸にあるCa' RoredànとCa' Farsettiの様子がいつもと違うのに気づいた。例のテロの関係だろう、イルミネーションが青・白・赤のトリコロールになっていたのである。…

冬の到来について

SAN MARTINOヴェネツィアとその後背地にだけ見られるお菓子、サン・マルティーノは11月の11日、この聖人の祝祭にあたって作られます。その馬にまたがった騎兵の形はある伝説にちなんだものです。 その昔、警備の任務に当たっていた古代ローマの兵士マルティー…

職人の生き様について

冬が近づき、すっかり日が暮れるのも早くなった。ora legale(直訳すると法定時刻、夏時間のこと)が終わったので時計が一時間遅くなり、例えばそれまで夕方6時が日没だったとして、それが翌日の同じ頃合になると時計は5時を指している、ということになるの…

ステータスシンボルについて

さて例のペルメッソ受領の日のこと、まずはリアルトの桟橋でマ氏と待ち合わせ、ヴァポレットでトロンケットへ向かった。ここはヴェネツィアにあっても普通の観光客はまず行くことのない場所である。私も滞在半年にして初めて足を踏み入れた。 ここには駐車場…

滞在許可証について

イタリアでの私の身分証がやっとできた。ここで話題とするのはPermesso di soggiornoペルメッソ・ディ・ソッジョルノ、いわゆる滞在許可証というものである。もちろん大学のほうの身分証は初めの頃に貰っており、研究活動のほうはいたって順調に進んでいる。 …

ベルギーについて

ブリュッセルはただひたすら寒かった。到着したのは昼過ぎだったので最初はそう違いは感じなかったものの、なにしろ朝がきつい。サンカントネール公園の近くに宿を取ったので朝早く公園に散歩に出てみたが、もう完全に冬の空気だった。コートを用意しておい…

モーダについて

所用あって近いうちにベルギーへ赴かねばならない。ここのところ普段使っている天気予報のアプリにブリュッセルの表示を追加して向こうの様子をチェックしているのだが、昼間の気温は似たようなものでも、最低気温が恐ろしく低い。 ヴェネツィアでも朝晩は冷…