サービス精神について

ここのところ過ごしやすくなってきたこともあり、ブチントーロの模型を探しながら街を歩き回っている。一度アルセナーレの近くで見つけたのだが、とりあえずいくつか見つけてから比べて買おうと思って見逃したところ、二日後には売れてしまっていた。再入荷…

安寧の日々について

最近は本業の方がちょっと忙しく、これといって面白い出来事はないようである。月末辺りからはまたあれこれ用事が始まるし、街を歩いているとそろそろヴェネツィア名物のアレの気配もあるのだが、それはまた始まってからの話としよう。 唐突なようだが、私の…

ならず者への対処法について

948年1月31日、ナレンターニといわれる海賊がヴェネツィアを襲撃した。この1月31日というのはヴェネツィアの守護聖人であるサン・マルコの聖遺物がヴェネツィアにもたらされた日(828年のこと)なので、当然のごとく祭日となっている。そしてこの日、サン・ピ…

パドヴァ大学について

こちらに来てから変わったことがもう一つあって、どうも私は少し感傷的になったような気がする。何度も書いたとおり、ここのところずっと読んでいる家主の本にはこの街に伝えられる民話が集録されているのだけれども、ボッコロの由来についての話など、美し…

七つの海について

こちらに来てからかなり痩せた。すっかりベルトが緩くなってしまっていたのだが、だからといってベルトの奥の穴を使えばいいというものではない。ベルトには大抵五つの穴が空けられているものだが、これは真ん中の穴を使ったときに余りの部分がちょうどよく…

郷里の食について

こちらに来てから初めて米を炊いた。 別に今さら里心がついたわけではない。どこへ行っても出されたもので満足する質であるし、父親が長野県出身で母親が埼玉県出身、自身の生まれは神奈川県で一番長く暮らしたのは兵庫県、という人生なので県単位のナショナ…

薔薇の蕾について

二日後は別の先輩御一家のご案内。前日到着されていたカンナレージョの投宿先まで伺って合流し、まずはリアルトの市場を散歩。それからメインの通りをずっと下ってS. Margherita広場で一休みする。 こちらの御一行にはお子さんが二人いらっしゃる。ともに何…

隣り合わせの聖と俗について

ここ二日ほど夜になる度に雷雨があり、ヴェネツィアの街はすっかり涼しくなった。この先数日間はまだ天気が優れないとの予報なのだが、さて、これが一通り過ぎたら秋の気配が感じられるようになるのであろうか。何ともタイミングの悪いことである。 というの…

伝説について

かつて全世界をおおい尽くした大雨をもって人類に試練をお与えになった主は、またその恩寵のしるしをも与えようとお考えになりました。世界を水の底に沈めた恐ろしい豪雨の記憶を消し去るため、世に二つとない素晴らしいもの、神の恩寵を語り継ぐよすがとな…

日陰について

以前スプリッツの話をした際、cicchettoチッケット(複数形cicchetti)という言葉について「少量の酒」と書き、その後また別のところで、これはもしかしたら意味が違うかもしれない、と書いていたことがあったかと思う。解明が進んだのでご報告しよう。 そも…

水面に映る灯について

一週間ほど前のこと。こちらではレデントーレの祭があった。その由来などは検索して他で見てもらった方が早いので省く。日程はだいたい7月の第3日曜日ということになるのだったか。その日曜日がメインで土曜日はその前夜祭ということになるのだが、前夜祭の…

阿房蒸気について

言わずと知れたことだが、ヴェネツィアは水の都であって街中に運河が張り巡らされている。辞書を繰ると、運河というのは「人工的に陸地を掘って作られた船舶用の水路」と書いてあるのだが、しかしこの街では陸地の方を人工的に作ったのであって、運河となっ…

カッフェについて

イタリア語でコーヒーはcaffèという。カフェではなくてカッフェ。最後にアクセントがあるので始めは違和感があったがさすがにもう慣れた。こちらではエスプレッソが主流なので「Un caffè, per favore.(A coffee please.)」と頼むとエスプレッソが出てくると…

海の男たちについて

約束の日、マ氏と待ち合わせた後、まずヴァポレット(水上バス)に乗せられた。サン・マルコの近くからだったので、ジュデッカかリドへ連れて行かれるのかと思ったが、船は外海方面へ進み、ジャルディーニで降りろと言われる。確かに遠い場所ではあるが、ここ…

越えられぬ壁について

エアコンの故障が思わぬ方向へ転がった。典型的な「怪我の功名」というやつである。まあ、順を追って記すとしよう。 エアコンが動かなくなったその日、まずはパラッツォの共用部分、階段の踊り場にあるブレーカーをチェックしに行った。こちらでは電圧が安定…

相変わらず鷹揚な人々について

食べ物の話ばかりしているというご指摘をいくつか戴いた。食べ物の話以外は理解出来ないので読み飛ばしているだけなのではないかとも思ったが、子供の言うことだからまあよかろう。斜め読みであってもこれだけ冗長な文章を一通り読んだという点については褒…

南瓜切という包丁について

季節はすっかり夏に入った。ヨーロッパの暦がどうなっているのか詳しく知らないが、しばらく前に「学校が終わった!」と掲げてセールをしている店があったのをみると、もうとっくに休みに入ったもののようで、大学や図書館も閑散としている。そして家族連れ…

悪徳の甘味について

意外なことに週明けすぐに配管工氏と管理人氏がやってきて、トイレとクーラーの水漏れを直していった。さらにもう一つ意外なことに、やってきたのは午後六時前である。この時期のヴェネツィアは九時を過ぎてもまだちょっと明るいくらいなので、活動していて…

慣れてしまったことについて

スプリッツはその後、実際に家のすぐ近くのバールで頼んでみた。その店ではなんとスプリッツ専用に、氷とオレンジのスライスを入れたグラスを冷やした状態で用意してある。実はその前の一軒目の店でも他の客が頼んだスプリッツを作っている様子を見ていたの…

近代化について

ブログのコメント欄を使えるようにせよとの要請があった。そのメールで用事を済ませてくれればいいものをと思ったが、私の育ったゼミには「士農工商・犬・後輩」の仮借なき序列がある。そのゼミの先輩の言うことなので仕方なく使えるようにはするが、こちら…

キ〇チガイについて

どうも聞いていた話と違う。ヴェネツィアはここのところ気温が30度前後まで上がる日が続いている。航空券を手配してくれた会社(長期出張などに対応したオープンチケットを扱う会社で、耳慣れないところである)から貰った資料にはヴェネツィアの6月の平均…

商人について

アパルタメントには足りない道具も沢山あり、例のRATTIという雑貨屋を教えてもらってからあれこれと買い揃え、また食材も整ったところでやっと料理ができるようになったのは何日目のことだったろう。日本である程度イタリア料理の練習もしていたので必要なも…

みずいろについて

ネット環境が悪いという話は何度か書いたと思う。SIMロックを解除しておいた携帯端末を持ってきてこちらでも携帯電話を使えるようにしてあり、アパルタメントではそのスマホのテザリング機能を介してパソコンをネットにつないでいる。しかし料金を優先して契…

ある流行り病について

日本にいた頃は三国同盟くらいしか思いつかなかったが、イタリアと日本の関係は意外と長い。ヴェネツィアの地にあった商業学校で日本語を学ぶ授業が始まったのは、維新直後の1873年のことだそうな。この時代、イタリアでは蚕の病気が流行って養蚕業が全滅し…

ジャッポネーゼについて

そもそもこのブログは、ラインだのフェイスブックだのを煩わしく思って始められない(どだいこのアパルタメントのネット環境では無理な話だ)この私が、私のことを知る人に近況を報告するために始められた。そのなかには以前の仕事の関係で低年齢層の読者も…

生活感との戦いについて

リアルト付近は常に混雑する場所なので、ちょっと買い物に出るにしても人込みが億劫である。仮住まいとはいえヴェネツィアに起居するものとしては、やはり快適な裏道を開拓すべきであろうということで、数日前からローマ広場方面に用事がある場合はカナル・…

ネズミの教えについて

世界で最も尊敬すべきネズミ、グリクレル女史が川上弘美『七夜物語』において非常に大事な教えを示してくれている。新聞連載の時に読んだきりなので物語のどの辺だったかは忘れたが、彼女が主人公の子供達に「洗ってから水を拭き取って食器棚に収めるまでが…

ユートピア人の恐怖について

ヴェネツィアの街中にはところどころ、柔らかいボールのような玩具を地面に置いたマットの上にペタペタとたたきつけて観光客(の子供)の気を引いている人々が居る。彼らは大概黒人なのだが、S. Lio教会の辺りにいたある物売りの前を少し通り過ぎたところで…

生粋のヴェネツィアーノについて

こちらへ来てすぐのある日のこと、アパルタメントの管理を任されているという人より電話があり、部屋へ来てもらっていろいろ説明を受ける。相手は当然イタリア語(たまに英語)なのだが、ちゃんと全部理解できたのかどうか。 その後、警察に届けを出す必要が…

世界遺産の隙間について

私のアパルタメントであるが、どういうわけかヴェネツィアの観光地として有名なリアルト橋から徒歩で三十秒ほどのところに位置している。だからといって開け放していても観光客の声でうるさいということはなく(後述するが隣人はたまにうるさい)、総じて快…