2020-12-01から1ヶ月間の記事一覧

乱暴者のジジイあるいは小舟のシロップについて

例の民話の本も短いものがあと四話残るばかりとなった。どれも大して面白くないのだが、残しておくのも癪なので片付けてしまおう。 UN VECIETO BIRBO あるところに、一人の小さな小さなジジイがいました。この小さな小さなジジイは、小さな小さな杖を一つ持…

鵞鳥の世話係について

前回の続き。 王の部屋係の女中が邸宅のバルコニーを開けますと、死にそうなほど寒い中を巡礼の娘が裸足で歩いてくるのが見えました。彼女は言います。「ここで何をしているのですか、美しいお嬢さん?」娘は答えました。「お願いです、この御屋敷で何か仕事…

太陽と月と風について

前回の続き。 こうして彼女は巡礼の身なりを整え、旅に出ました。歩きに歩き、荒野を越え森を抜け、山を越えて歩きました。一足目の鋼鉄の靴をすっかり履きつぶした頃、彼女は一軒の家を見つけました。その扉をたたきますと、老婆の声が聞こえます。「扉をた…

大鴉の王について

RE CORVO あるところに王様と女王様がおりました。女王様はご懐妊なさり、順調にご出産なさいます。が、ご懐妊中に誓いに背くことをなさったため、彼女は赤ん坊の代わりに大鴉をお生みになりました。その大鴉はすぐにバルコニーから空へ飛び去り、それから二…

林檎と皮について

今は南大東島に居るのだけれど、今年の四月から十一月の中旬までは十勝平野の果てに居た。経緯を説明すると長くなるのだが、一つだけ記すとすれば、ヴェネツィアーノのようにあちこちと渡り歩いて生きていくのも面白いかな、と考えてしまったということがあ…