風に喰われる人について

今回は「ジャックと豆の木」や「黄泉比良坂」ふうな呪的逃走譚が中心で、全体的にどこかで聞いたような話の継ぎ接ぎであった。さすがにこれだけ訳してくると話の型が被ってくるのは仕方ない。もう前回ほどの強烈なインパクトは期待できないのだけれども、細かく読んでいくと興味深い点もいくつかあった。相変わらず長い上に退屈な話であるが、よろしければ御覧いただこう。


EL VENTO

あるところに一人の王がありまして、彼には息子が一人ありました。この息子と他の若者たち、彼らも他の王の息子たちなのですが、彼らが広場に集まってこう言い出しました。「クルミ遊びをしようか、負けたやつはVento[風神?]に喰わす。」――すると残念なことに、仲間の中で一番小さかったあの王の息子が負けてしまいました。彼らは言います。「約束だ、彼を連れていってヴェントに喰わさなきゃ。」

そうして若者たちがヴェントの家の玄関まで彼を連れていったところ、そこにはヴェントの娘がいました。彼女は言います。「貴方たち、何のご用?」彼らは、この若者をヴェントに喰わせるために連れてきた、と答えます。彼女は言いました。「分かったわ、ありがとう。それじゃあとりあえず君は上がってちょうだい。父は今いないの。」彼女は彼を連れてある部屋に通し、言いました。「父が帰ってきたら何もかも私が話すわ。あの人が貴方を助けてくれるようにするから。」そしてこの娘はその後数日間、父親に十分な食べ物を用意しておきました。

そしてある日、彼女はいつも以上に食べ物を用意し、父親が帰ってきたところでこう言います。「お父様、お戻りになりましたか?」すると彼は言いました。「くんくん…キリスト教徒の匂いがするぞ! 誰かいるのか、それとも誰か来てたのか。」彼女は言います。「お父様、気になさらないで! どうぞ召し上って。」そして彼女は十分な食べ物と飲み物を出しました。満足したかどうか聞くと、彼は十分だと言います。「じゃあ」彼女は言いました。「少しコーヒーでもいかが?」彼は言います。「おお、そうだ。ほんの少しでいいからな。」彼女は大きな鍋でコーヒーを用意し、たらいに入れました。そこへ十から十二個ほどの丸パンを漬して言います。「どうぞお父様、召し上がれ。」食べ終わると彼は言います。「おお、これくらいでよさそうだな!」そこで彼女は言いました。「ねえお父様、一つお願いがあるのです、聞いてくださると嬉しいのですけれども。」父は言います。「言ってみなさい。」すると彼女は「かわいそうな若者がいるのです。お父様に食べさせようと連れてこられたのですけれど、どうかお願いです、彼を自由にしてやってください。」彼は答えました。「ここへ連れてきなさい。その男と話がしたい。」そうして彼女は若者の部屋へ行って言いました。「貴方をお父様のところへ連れていくわ。何も怖がることはないの、お父様が貴方に要求するものは私が用意するから。」

ヴェントの前に出たとき、この若者は言いました。「どうか命ばかりは!」ヴェントは言いました。「ああ、生かしておいてやろう、明日の同じ時刻に、すべて小鳥の羽毛で作ったマットをお前が持ってきたらな。」若者は、きっとお持ちします、と答えます。そして彼は自分の部屋に戻ると泣き出しました。あの娘が部屋に入ってきて、なぜ泣いているのかと尋ねます。彼は、彼女の父がすべて小鳥の羽毛で作ったマットを持ってくるように言われた、と答えます。彼女は言いました。「泣かないでよ、おバカさんね。私が用意してあげるわ。」

翌日、彼女はこれまでにないほどのたくさんの小鳥を捕りにやり、その毛をむしってすべて羽毛のマットを作り上げました。夕食のときになり、かの老人は家に戻ってきて言います。「やれやれ、食い物をくれ、お腹が空いた。」そこで彼女は、たらいに入れたパンと十二羽の若鶏のロースト、桶に入れたワインというふうに、十分な食べ物を用意しました。そして彼は満腹になると娘を呼んで、あの若者を来させるように言いました。若者は肩に例のマットを担いでやってきます。ヴェントはそれを見て言いました。「これはいいだろう。では明日の同じ時刻に、お盆に一杯のマラスキーノチェリーを持ってきて、一つ口に入れる度に「ohimè[ああ!]」と言うのだ。」

若者は、きっとそうします、と言いました。そして部屋に戻って泣き出しました。あの娘が彼の部屋にやってきて言います。「何を泣いているの、お父様が貴方に要求するものはすべて私が用意してあげるって言ったでしょう?」彼は言いました。「これを用意してもらうのは難しいと思うんだ。」「何て言われたの?」「お盆に一杯のマラスキーノチェリーを用意して、彼がそれを口に入れる度に「ああ」と叫ばなければならないって言うんだ。」「明日持ってきてあげるわよ。」

翌日になり、彼女は父に夕食を用意しました。父が夕食を食べ始めますと、彼女はあの若者の部屋へ行き、一つ一つにダマスク風の飾りが付いた針を刺した、お盆に一杯のマラスキーノチェリーを渡しました。そうして父のところへ戻ると、何か要るものはないかと言います。すると父は、あの若者を寄越すようにと答えました。若者はお盆を持ってやってくると言いました。「どうぞ、マラスキーノチェリーです。」そこでヴェントはチェリーを一つつまみ、口に入れました。彼がそれを呑み込んだとき、若者は「ohimè」と言いました。自分がかみ砕かれたように感じたからです。そうしてヴェントは言いました。「明日の同じ時刻に、裸でもなく服を着てもいない、そして地面に立っているのでもなく馬に乗っているのでもない、何かを食べているのでもなく何も食べていないのでもない男を連れてきてほしい。」若者は、きっとそうします、と言いました。部屋に戻ったとき、彼はここ数日毎回泣き出していましたが、この日はこれまで以上に泣いていました。この試練については、いくら彼女でも用意してもらうのは難しいと思ったからです。娘が部屋にやってきて、何を泣いているのかと尋ねますと、彼は顔も上げず、彼女の父がこれこれこのように言ったのだと言いました。彼女は言います。「大丈夫よ、バカねぇ。お父様が貴方に要求するものはすべて私が用意してあげるって言ったでしょう?」そうして彼女は一人の男を呼び寄せ、また一匹の馬を連れてこさせました。彼女はこの男に半分シャツを着せ半分は裸、半分はズボンをはかせ半分は裸、片方は靴を履かせもう片方は裸足にしました。片足は馬にかけさせもう一方は地面に、そして口にパンを押し込みました。

翌日になり、彼女はいつも通り父の夕食を用意しました。そして、十分に食べたところで父は言います。「あの若者を呼んできてくれ。」若者はあの男と馬と共にやってきました。ヴェントは何度もそれを見て、そして言いました。「これはいい! こいつは裸でもなく服を着てもいない。」半分シャツを着て半分は裸、半分はズボンをはいて半分は裸、片方は靴を履いてもう片方は裸足だからです。「地面に立っているのでもなく馬に乗っているのでもない。」片足は馬にかけてもう一方は地面についているからです。「何かを食べているのでもなく何も食べていないのでもない。」パンを口に入れたままだからです。「ようし…気に入った!…もう何も望むものはない、お前は家に帰っていいぞ。」

出て行く前に、彼はあの娘のところへ行きました。彼女は聞きます。「ぜんぶ終わった?」彼は答えます。「あの人は家に帰っていいって言ってくれたよ。」そこで彼女は言いました。「よかった。私は貴方を助けてあげたわよね。だから今度は私を助けてくれないと。私はもうここには居たくないのよ。」彼はすでに彼女のことがとても気に入っていましたので、こう言いました。「うん、君も一緒に来て、ぼくと結婚しよう。」彼女は言います。「宝物も持っていきましょう。宝石も全部、お父様の三つの魔法の道具も。」彼らはそのとおりすべてのものを持ち出し、二人で姿をくらましました。

彼らが歩きに歩いて道半ばまで来たとき、これまでになく恐ろしい風が吹くのを感じました。彼女は後ろを振り向いて言います。「お父様が走って追いかけてくるわ。聞いて、貴方への愛のためよ、法具を一つ使うわ。」彼女が魔法の聖体皿を投げると、たくさんのいばらが現れました。父親はそのいばらをすべて踏み越えて、後を追ってきます。彼女は振り向き、父がまだ追ってくるのを見ました。そこで彼女は魔法の鏡を後ろへ投げると、たくさんの水がわき出てきました。彼はその水も乗り越えてきます。彼女は言いました。「貴方への愛のためよ! もう一つの魔法の道具を使うわ。これが最後の試練、これでも駄目なら私たちは死ぬのよ。」彼女は魔法のカミソリを投げると、見たこともないほどたくさんのカミソリが現れました。彼女の父親はそれらのカミソリの上を越えてきましたが、最後のカミソリの上で転び、喉を切ってしまいます。死を前にして彼は言いました。「聞け、忌々しい者どもめ、その若者の両親がそいつに最初のキスをしたとき、そいつはもうお前のことを何もかも忘れてしまうことになるのだ!」彼女は若者に言いました。「貴方聞こえた? お父様が言ったこと。」彼は答えます。「うん、聞こえたよ。」「もう貴方には誰もキスをさせないようにしないとね。」

二人はある安宿にたどり着き、そこで彼は言いました。「何日かここで待っていて。家へ戻って、結婚相手ができたってお母さんに知らせてくるよ。話がついたら君を連れに戻ってくるから。」

彼は父と母のいる家に戻りました。両親は彼にキスをしようと駆け寄ってきましたが、彼は誰にもキスをしてほしくないと言い、これまで何があったかを話して聞かせます。そしてその後、「じゃあちょっと休ませて、疲れちゃった。」と言いました。彼が眠るとすぐに両親は国中にお触れを出し、王の息子が帰ってきたこと、パラッツォで祝賀会を行うことを知らせました。

人々は皆、王の息子に会い、祝賀会を楽しむためにパラッツォに集まります。この若者にお乳をあげた乳母もやってきました。この乳母はとにかく彼に会いたくて、坊やがどこにいるのかと尋ねますが、部屋で眠っているのでそっとしておくようにと言われました。そこでこの乳母はどうしようと考えたのでしょう?…。彼女は彼が目覚めるのを待とうと、静かに静かに上がっていきました。そうするのが習慣だったからです。彼女は部屋に入り、彼の顔がよく見えるようにとひざまずき、内心でこうつぶやきました…。「キスしてあげましょうね?」そうして彼女はキスすると、部屋を出ました。

この若者が目覚めると、みんながやってきて言います。「我らが王様、我らが王様!…長い間、外でどうしていらっしゃったのですか?」彼は言います。「何を言っているの?…君たちおかしいんじゃない!…何も分からないよ!…ずっと君たちと一緒だったんじゃないの?」彼らはみんな、この若者がこれまでどうしていたのかをまったく覚えていない様子なのを見て、ぽかんとしてしまいました。そこで彼の母親が言います。「誰のところにいたのか覚えてないのね?」彼はまた、みんなの方がおかしいんじゃないのか、何も知らないと言います。そして彼は豪華な食事が用意してあるのを見て言いました。「これは何のお祭り?」母親は答えます。「貴方のためよ。」彼は「よし、何でもいいや、食べようよ!」と言いました。すぐに優雅な淑女たち、つまり王の娘たちや、偉大な紳士たちがやってきます。この若者は大いに飲み食いし、そうして王の娘のうちの一人を見初めました。そして彼は母親に言います。「お母さん、あの娘がぼくの花嫁だよ。」母は言いました。「いいわね、じゃあ彼女と結婚することにしましょう!」そこで彼らは翌日も同じように祝祭を行い、参加したい人は誰でも来られる祝賀会を行うことに決めました。

ここで彼らのことは一旦おき、ヴェントの娘の方に戻りましょう。彼女は安宿にいて、まだ彼が迎えに来るのを待っていました。ところが彼が別の女を見初めて求婚したと聞き、すぐに立派な王女の格好をして馬車と馬を仕立ててパラッツォへ行きました。到着し、入っていいかと尋ねますと、皆はどうぞ上がってくれと言います。彼女は宴会場へ入りました。そして彼女の婚約者が若い娘と一緒にいて、皆がお祝いをしているところを見ますと、彼は私の夫なのに、と言いながらため息をつきました。

宴会の席にいた若者の両親はこの娘が落胆している様子なのを見て、何があったのかと尋ねます。彼女は、何でもありません、と答えました。二人とも彼女に話しかけ、彼女にも何か言うように仕向けますが、彼女は、何もお話しすることはありません、と言います。ちょっとした遊びにも参加しないので、彼らはとりあえず彼女をキッチンへ連れていって休ませました。彼女はキッチンへ行くと、小麦粉を少しくれるようにとコックに頼みました。彼女はそれで、雌鶉と雄鶉を一つずつ作り、そして雌鶉をお皿の上に、雄鶉をもう一つのお皿の上に置くと、テーブルに戻りました。

そうして彼女は、あの若者の前に雌鶉を、そして雄鶉を置き、そして言いました。「さあ雌鶉よ、お話しなさい、雄鶉が答えられるように。」すると雌鶉は言いました。「雄鶉よ、貴方が子どもたった頃、広場でクルミ遊びをしたこと、貴方がそれに負けてヴェントに喰わせるために連れていかれたことを覚えていますか?」雄鶉は答えます。「ああ、うん…思い出してきた。」そして若者の方もだんだん思い出してきました。雌鶉は言います。「ヴェントが貴方に望んだものすべてについて、ヴェントの娘が助けてくれたことは覚えていますか?」雄鶉は答えます。「ああ、うん…思い出してきた。」若者の方もだんだん思い出してきました。雌鶉は言います。「その娘がすべての魔法の道具を投げて、彼女の父が死んだそのとき、貴方がキスをされたら彼女のことを忘れてしまう、という呪いをかけられたことを覚えていますか?」雄鶉は答えます。「ああ、うん…思い出してきた。」雌鶉が最後の言葉を発したとき、この若者は娘に近づいて言いました。「部屋で寝ていたときに誰かがぼくにキスをしたんだ、それで君のことを忘れてしまったんだよ。」そこで彼は、これまでにあったこと、彼女が彼のためにしてくれたことをそこにいた紳士淑女みんなに説明しました。そして彼は言います。「彼女がぼくの命を救ってくれたんだ、彼女がぼくの妻になる人だよ。」

するとみんなは言いました。「それが正しい、彼女が貴方の花嫁だ!」そうして二人の若者は婚約し、八日間の祝賀会の後で結婚式を挙げました。これでおしまいです。


……この娘は最初の時点で父親に気付かれる前に件の若者を逃がすことができたように思えるのだが気のせいか。もちろんそれでは十分な恩が売れないから話にならないのだが。とすると、若者を一旦窮地へ追いやったのは娘の計算であるか。

順を追っていこう。最初のクルミ遊び「il gioco delle noci」というのは、木の上から下にいる者に向かってぶん投げたり、円錐状に積み上げたクルミに向かって投げてどの部分を崩したかを競い合ったり(頂上付近の得点が高いらしい)と、ローマ時代から様々なやり方があったそうである。どれも子どものするものと決まっていて、「il tempo delle noci」すなわち「クルミ時代」というのは幼少期の謂なのだとか。ただし後の展開を見ると彼らは結婚適齢期を迎えているようなので、多少の違和感は拭えない。当時の結婚年齢は今よりいくらか低かったのだと考えるべきか、或いは当時の青年たちは成長しても純粋な心を持ち続けていたのだと考えるべきか。ただ、最後の雌鶉の「貴方が子どもだった頃」というセリフがちょっと引っかかる。彼がヴェントの屋敷にいた数日の間にウラシマ効果が起きたという可能性もあるのだが、しかしそうなると若者だけは昔のままの姿であるはずだ。こうやって考えれば考えるほど辻褄が合わなくなるのがイタリアらしい。

「El Ventoに喰われる」というのは「雷様におへそを取られる」「河童に尻子玉を抜かれる」或いは「天狗に連れていかれる」という程度の言い回しと思われる。ventoというのは「風」という意味だが、定冠詞が付いて大文字になっていたのでここでは固有名詞である。そしてこれを、forutunaは「運命」だけれどもla Fortunaは「運命の女神」フォルトゥーナ、というのに準えてみると、このel Ventoというのは風神であり、クルミ遊びはその祭りで生贄を選出するための儀式が遊戯化したもの、という可能性も考えられないことはない。

が、Eolo(アイオロス)ではなくてわざわざil Ventoを風神とする用例や慣用句はどうも少ないようである。この話の中で固有名詞となっているのは擬人化されたからであると解釈し、あとは土地柄に鑑みて「風に喰われる」というのは難船を表した慣用表現と考えておくこととする。いくつか辞書をひっくり返してはいるのだが、今のところ確証は得られていない。

しかし何にせよ、慣用句が現実のものとなった世界はあまりにも厳しい。約束を破ったら本当に針を千本呑まされるようなものである。日常的な遊びに負けた程度のことでこのように死の危険にさらされてしまうのだとすると、ヴェネツィアの子どもたちが地中海を股にかけ、タフな貿易をこなせるほどまでに強く育った理由が分かるような気もする。

閑話休題。これまで見てきた話も概ね女性の活躍が著しいものばかりであって、この作品も例に漏れず、一番動いているのはヴェントの娘である。彼女は最初に会った時点で自分がこの青年を「喰う」ことに決めていたようであるが、やはりその行動力と執念は確かなものだ。目の前で父親が死んでも、というか自分の手で父親を殺しても平然としているところが特に逞しい。そして、対する青年の方の惰弱・無能ぶりもまた底抜けのものであると言えよう。この青年にそこまで惚れ込むほどの魅力があったのかという点については今ひとつ得心がいかないが、この娘にとっては外へ出るために何か切っ掛けが必要だったのかもしれない。しかしこの娘であれば一人で飛び出したとしても自身の才覚でどうにでもなったのではないか。

中盤の三つの試練について、最初の二つは青年の身代わりとなる沢山の命のメタファーのように見えるが、三つ目のマージナルな男の意味を考えるのは非常に難しい。前日の準備段階で口にパンを突っ込まれたまま翌日まで待機させられていたのか、という点ばかりが気になり、思考がその先へ進まないのである。三つ目だけが明らかに異質であり、また解放の条件ともなっていることから見ても、これには何か意味があると思うのだが。

逃走場面で娘が父親に向かって投げつける三つのマジックアイテム、聖体皿・鏡・カミソリについても三つ目になって突然殺意が剥き出しになっており、またそこから現れる物体の、木(いばら)・水・金(カミソリ)という属性の流れを見ても最後だけが人工物ということで、最初の二つとのバランスが悪いような気がする。西洋なら「木火土金水」ではなく「地水火風」だろうと思うし、そうするとヴェントが「風」であることも当然視野に入るのだが、それを考慮に入れたところで話の行き着く先がまったく見えない。何しろイタリア人の作ったものであるし、とにかく「三」という段取りにこだわりたかっただけであろう。この話を作った人間はおそらくそれ以上のことを考えていない。

それなりに労力をかけて訳したが、最初にお断りしたとおり大したものではない。読んだ方は軒並み損をした御気分であろうが、こちらとしてはそれなりに達成感があるのが不思議である。